「あっ」

 流石に男の本気の力で引かれては留まることは出来ない。

 それに無理に引っ張ってもしのぶが痛い思いをするだけだ。


「大人しくしてれば痛い思いせずに済むぜ? お前らは人質だし、美来が橋場さんの言う事聞いてれば変なことはしねぇよ」

 そう言って今度は黒髪の男が遥華の腕を掴む。

 遥華はムスッとした表情をしつつも仕方ないなとばかりにため息を吐いて大人しく従っていた。


 それを見ながらあたしは「……本当に?」と聞き返す。

「あ?」

「本当にあたしが大人しく従っていればしのぶと遥華には何もしないのね?」

 橋場の好きになんてされたくない。

 でも、それ以上に巻き込んでしまった二人を酷い目に遭わせたくなかった。


「……ああ、約束してやるよ」

 あたしの言葉に、橋場が嫌な笑みを浮かべて答える。

「お前が大人しく俺のものになれば、その二人には手を出させねぇよ」

 分かってるよな? と、他の二人に確認を――というより、返事を求めた。

「はいはい、分かってますよ」
「分かりましたよ。……ちょっとは遊びたかったっすけど」

 黒髪はヘラヘラ笑いながら、茶髪は渋々と了解の返事をする。