……大丈夫。
 きっと、奏は気付いてくれる。

 幹人くんだって、きっとあたしを探してくれてる。

 それに、遥華がさっき連さんに電話していたから誰かに攫われたってことは知られている。


 恐怖に耐えるように、自分に言い聞かせるように助かるはずだと考えを巡らせた。


 余裕そうだった遥華も、状況が悪いことは分かっているのかあまり話さない。

 しのぶは少しは落ち着いたかもしれないけれど、まだ手が震えてる。

 あたしもそれ以上は何も話さず、しのぶの手を握って助かる方法を考えていた。

***

 しばらくして車が止まる。

 結構時間が経った様に感じたけれど、多分実際には15分くらいだと思う。

 思ったよりは遠くなさそうで良かったけれど、いつ助けが来るか分からない状況だから不安はなくならない。


「ほら、降りろよ」

 黒髪の男がそう言ってしのぶの腕を掴んだ。

「っ! やっ!」

「しのぶ!」

 引きずり降ろそうと腕を引く男に、しのぶとあたしは抵抗するように踏みとどまった。

「お前ら諦め悪すぎだろ。ここまで来てまだ抵抗すんの?」

 呆れ気味にため息を吐いた男は、今度は力いっぱいしのぶの腕を引く。