震えるしのぶを少しでも落ち着かせたくて、あたしもギュッと抱きしめる。

 そうしているうちに橋場と黒髪の男も車の中に乗り込んできた。


「ちょっと、あたしまで乗る必要ある?」

 香梨奈さんも黒髪の男に背中を押される形で乗り込んだ。

「まあまあ、もうちょっと付き合ってくれって」

 ヘラヘラとした男に香梨奈さんは何か言い返そうとしたみたいだったけれど、運転席から「おい! 急げ!」と焦った怒鳴り声がして声を出せなくなったみたい。

 最後に橋場も乗り終わり、ドアを閉められたことで渋々座席に座っていた。


 そうして、車は動き出す。


「……どこまで行くの?」

 しばし無言の車内だったけれど、これから橋場があたしたちをどうするつもりなのか知っておきたい。

 あたしのことは連れ帰るつもりなんだろうけれど、しのぶと遥華はいずれ解放するとさっき茶髪の男が言っていた。

 それなら、このまま地元に戻るってことはないだろう。


「あ? まあ、まずは郊外に潜伏場所を用意してもらったからなぁ。まずはそこに行くさ」

 橋場の答えに、思った通りこのまま遠くへ行くわけじゃないと分かって少し安心する。

 でも。

「地元に戻るまで待てねぇしな。まずはお前を味わわせてもらうぜ?」

「っ!」

 ニタリとした笑みに、ゾッとした。

 明らかな身の危険に、思わずブルリと震える。