「全く、そういう強さも美来さんの魅力だよな。……その可愛い顔が絶望に染まるところを見れないのが残念だよ」

 心の底から残念そうに言うと、稲垣さんは「じゃあな」と今度こそ倉庫から出て行ってしまった。


「さぁて。美来、本当に会いたかったぜ?」

 稲垣さんがいなくなったことで場の主導権を得た橋場が近付いて来る。

 ニヤリと嫌な笑みを浮かべていた橋場は、あたしの目の前に来ると不機嫌そうに眉を寄せた。


「でもよぉ、その格好はなんだ?」

「……何よ」

「こんなダセェ眼鏡つけて、可愛い顔が台無しじゃねぇか」

「あっ!」

 言うが早いか、橋場は手を伸ばして来て眼鏡を奪い取る。

 かわせないわけじゃなかったけれど、抵抗するとまたしのぶに危害が加えられそうで動きが鈍ってしまった。


「それに、その珍しい色の目も見えねぇからなあ?」

「くっ……!」

 最近はもうカラコンをつけてはいない。
 この学校ではもう《かぐや姫》があたしだと知られてしまったし、隠す意味があまりなかったから。

 奏もこの街であたしが目立たないようにとカラコンをつけるよう言っていただけみたいで、すでに《かぐや姫》として目立ってしまった今はそこまでうるさくは言ってこなかったし。

 おさげと眼鏡をしているならいいだろう、って。