……奏が何を考えてあたしに地味な格好をさせているのか。

 初めは奏の言う通り、転校する原因となったストーカーの子に見つからないよう念のためにしているのだと思っていた。

 でも、いつからか“念のため”なんかじゃなくて“あたしを守るため”だというのがにじみ出てきた。
 今ではもうその辺りを隠そうとしているのかどうか……。

 とにかく、あたしを守るためなのは確実。

 そして、そこから導き出される答えは……。


 あいつしか、いないよね……。


『早く俺のとこに()ちて来いよ』

 顔を合わせるたびにそう口にする男・橋場(はしば)冬馬(とうま)という男を思い出す。

 暗い目をした、厄介な地元の不良。


 いじめっ子を懲らしめてやったりする延長で、いつしか迷惑行為をする不良たちも相手にするようになっていたあたしと奏。

 そんな中、あいつにあたしは目をつけられた。

 どういうわけか変な執着をされるようになってしまったんだ。

 二年前、この街で《月帝》と《星劉》の抗争に居合わせてしまう原因となった噂を流したのもあいつだった。


 でも、奏のストーカー関連の事件があった頃はしばらくあいつも大人しかったんだけれど……。

 そう考えて、ふと気付いた。