小道具の羽と花冠もつけてから部屋の中に臨時で用意されていたスタンドミラーの前に立って、どんな感じか確認してみる。

「おお……」

 つい声が漏れた。

 あたしの黒髪でどれくらい天使っぽくなれるかと思っていたけれど、これは中々いけるんじゃない?


「可愛らしいわ……やっぱりとても似合っているわね」

 後ろの方から一緒に鏡を覗き込んでいたすみれ先輩は、「でも」とほんの少し残念そうな色を見せる。

「髪、解いてはダメかしら?」

「すみません、また結うの結構手間なんです」

 すぐにキッパリと断ったあたしに、すみれ先輩は「そう……」とあからさまに残念だと眉を寄せた。


 あたしの地味な格好はまだ続けろと奏に言われている。

 特に最近は少しでも外で髪を解いていたり、眼鏡を外していたりすると強く言われるんだ。

 少しピリピリしている奏に疑問はあるけれど、多分あたしのために言ってくれているんだろうから……。


 あたしが食堂で《かぐや姫》としてお披露目されたときから奏はノートパソコンで何か色々やってることが増えた。

 初めは引っ越しやら何やらで忙しくて出来なかった動画配信を再開したのかと思ったけれど、そういうのとは違うみたい。