「どうかな? 気に入ってくれた?」

 満足げな笑みを浮かべる坂本先輩に聞かれ、あたしは震えそうになる口を開く。

「……坂本先輩」

「ん? なんだい? どこか気になるところがあるのかな?」

 微笑みを絶やさない彼に、あたしは恐る恐る質問する。

「とても素敵な衣装です。……ただ、高いんじゃないですか? これ」

 どこからどう見てもちゃんとしたドレスだ。

 お店や通販で売っている三千円程度の仮装用衣装とは全く違う。

 絶対に万単位はいっている。
 ……いや、下手をすればこの一着だけで10万を超えるかも……。


「まあ、一般生徒が用意する衣装よりはちょっと高いかな?」

 ちょっとなわけあるかー⁉

 叫びたい気持ちを押さえ、あたしは何とか「良いんですか?」とだけ聞いた。

「良いんだよ。僕個人のお金で支払っているし……文化祭とか、たくさん頑張ってくれたみんなへのお礼も兼ねているからね」

「お礼……」

 みんなへの労わりの気持ちだと言われてはこれ以上拒否の言葉は口に出来ない。
 価格はともかくとして、坂本先輩個人のお金だというなら尚更。

「まあ、美来さんにはレンタルじゃなくてオーダーメイドでプレゼントしたかったけれどね」

「え⁉」

 さりげなく発せられた言葉に色々と衝撃を受けた。