お互いに真っ赤になって、どうすればいいのか分からない。

 でも、離れたいとは思えなくて……幹人くんの背中に回した腕はそのままだ。

 彼も同じように思ってくれているのか、離れようとは言わない。
 

 でもこの落ち着かない状況は何とかしないと、と思う。

「ああー……その」

 視線を泳がせていた幹人くんが、あたしより先に声を発した。

「そういえば……昔話のかぐや姫って、最後は月に帰っただろ?」

「へ⁉ あ、うん。そうだね」

 赤くなった顔を誤魔化すために言ったからなのか、話題転換だとしてもいきなりすぎる。

 あまりにも脈絡が無さ過ぎて、普通に声が出てきた。


 でも何でいきなり昔話のかぐや姫のことを?

 かぐや姫をチョイスしたのは、あたしがそう呼ばれているからなんだろうけれど……。


「月に――月の帝の元に帰った」
「月の帝……って、月帝?」

 その言い方だと、幹人くんが所属するチーム名を連想するのは当然だった。

「ああ……。だからよ……美来、お前の帰る場所は次の《月帝》総長になる俺のところだって思うんだ。だから……ずっと、俺の側にいてくれ」
「幹人くん……」

 それはもうプロポーズなんじゃないの?

 なんて思ってしまう。