温かくて、心地よくて……幸福感がハンパない。

 寒い朝のお布団以上の心地よさに、ずっとこうしていたいと思ってしまう。

 幹人くんの特訓のためにしていることだけれど、もしかしたらあたし自身がこうしたかっただけなのかもしれない。


 チラリと、あまり顔を動かさないようにして幹人くんを見る。
 真っ直ぐ見て目が合ってしまったら、きっとまた彼は緊張してしまうだろうから。

 幹人くんは耳を赤くさせながらも落ち着いた表情をしている。

 あたしと同じように、心地いいって思っているのかな?


「……なぁ、美来」

「な、何?」

 声を掛けられて、一瞬盗み見ていたのがバレたんだろうかとビックリする。

 でも幹人くんの手がぎこちなくあたしのおさげに触れたことで違うと分かった。


「髪、ほどいて良いか?……触ってみてぇ」

「い、いいよ……」

 まさかハグ以外のこともしようとしてくれるとは思わなかったから、異様にドキドキしてしまう。

 幹人くんは痛くないようにと気を使ってくれているのか、ちゃんと両手を使ってゴムを取ってくれる。

 でもある程度ゴムが緩むと、あたしの黒髪はサラサラと勝手にほどけていった。

 二つとも解いて、手櫛で()くように触られる。