「ま、俺も次期総長として威厳が無くなんのは困るからな。八神さんの顔を潰すわけにはいかねぇし」

 明るい声で頑張ると言ってくれた幹人くんに、あたしの気分も上昇する。

「うん!」


「でも特訓ったって、何するんだ?」

 首の後ろを掻きながら、笑顔を無くし本当に困った顔になる幹人くん。

 まあ、当然といえば当然の疑問。

「そうだね……要はあたしに対しての耐性をつければいいんだから……」

 人差し指を口元にあてながらうーんと唸って考える。

 いきなりキスは多分無理だし、手を繋ぐところから?
 でも手を繋ぐのはこの間したし……。

「とりあえず、ギュッてする?」

 両腕を軽く広げて見せて、聞いてみる。

「っ⁉」
「ほら、そこですぐに照れちゃうからダメなんだよ。せめて抱き締めてからにして?」

 すぐに息を呑んでカァッと顔を赤らめる幹人くんを叱る。

 聞いてみただけでこんな風になってたら、しっかりハグするのに何日かかるか分からない。


「いやお前、そんなおねだりするみたいに……あーもう! わーったよ、覚悟決めるよ!」

 赤い顔のまま何か言っていたけれど、ヤケになったかのように叫んで幹人くんも腕を広げた。

 その腕がゆっくりとあたしの身を囲う。

 触れていないのに、もう抱きつかれているみたいだ。