「きっとこれが最後だから、言うわ。あなたを見て来た隣人が泣いてるわ。止まって欲しかったと」

彼女を見つめてきたと思われる、悲しげな顔の妖精。私が見つけたその子のために、それだけは彼女に告げたのだった。

クリストフさんと部下の騎士さん達が着いたあと、彼女は部下の騎士さん達によって王宮地下にある牢へと連れていかれた。

そして、クリストフさんが私に聞いてきた。

「すまなかった。ユウ、大丈夫だったか?」

今回の王宮への緊急招集礼状にはそれとは別で、今回の詳細をクリストフさんが綴った手紙がついてきた。

それは王宮にいる隣人さん達に聞いてまわる、今回の事件の捜査協力をお願いされていた。

なので、王宮に来て直ぐにサリーンが周囲の妖精や精霊に声を掛けていて、今回の実行犯の捕縛となったのだった。

「クリストフさん、大丈夫だよ。今回はそんなに大変でもなかったもの。ただ私の存在に善し悪しがあるんだなとは、思ったけれどね」

少し苦笑を浮かべて言った私に、クリストフさんは直ぐに反論した。

「ユウはなにも悪くない! この世界の精霊王や妖精に愛されているに過ぎない。今回のことだって、ユウがこの世界に来なくっても情勢上起こりえた」

クリストフさんが言うことは最もだ。

どこの国も、この大陸で一番栄えているイベルダ国の土地は魅力的で欲しいんだろう。

戦争のきっかけはそういったものなのだろう。

自分の国に無いものが欲しい、だから侵略する。

される方だってそんなことは受け入れられないから、戦う。

そういうものなのだ。

きっと、戦争のない平和な世界ってとっても理想的で難しい。

争いの無い世の中って、きっと無いから……。

でも、無くせたら素敵だから、希望だけは小さく持っててもいいかな。

つかの間かもしれなくっても、七十年戦争のない国に生まれて育ったから。

私は、自分の生まれた国のいい所はそこだって言えると思うから。

希望として、持っていようと思う。