「さて、あなたはどちらの国の方かしら? それともどちらかの国に脅されてしまったのかしら? 正直に話した方が身のためよ?」

私の言葉に顔を上げて、私を見た彼女は自身の失敗を悟った顔をして口を閉ざす。

「別に話さなくってもいいのよ。この毒物を貴方が混入させて、王太子様に出したことはちいさな隣人たちが見ていたし、彼らは私には嘘がつけない。それが真実で事実だから」

この国にいるちいさな隣人たちは私の味方で、精霊王の愛し子の私には嘘なんてつけない。

意地悪やイタズラが好きな子達でも、私の前では素直で愛らしい隣人に早変わりなのだ。

この精霊と妖精の溢れる土地で、そこに愛し子がいる状況でこの国で悪さなんて本来は出来ようはずがない。

全てが、見ている妖精や精霊から愛し子に筒抜けになるから。

だから、それを知らない者。この国以外の出身者がこの事件の犯人であると、見当がついていたのだ。

そして、この女官さんは私の考えの通り、西の国出身の女官さんだった。

行商だった西の国出身の御両親は、この国を気に入り祖国を離れてこの土地に根ざした。

しかし西の国出身だったことで、そちらの暗部に目を付けられて彼女は西の考えを教育されて育った。

そうして今回女官になれたことで、最近の情勢からこの度の王太子様への毒殺未遂となったのだろう。

今回のものは新たな毒で解毒剤も、彼女が暗器と共に持っていたもの一つのみという急ごしらえのもの。

手を組んだものの、どちらの国も単独でなんとかイベルダを手中に収めたいという思いがあるようだ。

まだまだ不安定だとも言えるが、事件を起こすだけの物があるとすれば、その起因は私の存在にもありそうだ。