私が、もっと大人だったら?

見た目にも自信が持てるほどの容姿だったら?

それでもきっと、私の立場で相手から純粋な好意を受けることはとても難しいだろうと思う。

この容姿だから、黒髪と黒目で魔法と治癒が得意な異世界人。

この国の救世主。

私を囲うためなら、きっといくらでも気持ちは偽られることだろう。

だから、この婚約も国が安定したら私から解消するつもりだ。

今もその考えは変えるつもりはない。

だから、早めにこの国の情勢を安定させて、ベイルさんにはきちんと彼と似合いの相手と添い遂げられるようにしなければと思う。

どんなに、私の胸が痛んでも、そこは見ないふりでやり過ごすのだ。

「ユウ姉様、そんな顔をしないで! 姉様はずっとミレイド家にいれば良いんだわ! ここが姉様の家よ!」

私の表情が悪かったのか、ジェシカちゃんがギュッと私を抱きしめて叫んだ。

ハッとして、私は抱きついてきたジェシカちゃんに腕を回して抱きしめ返すと、言った。

「ありがとう、ジェシカちゃん。私が、この世界に来れて良かったことは、ここで新しい家族が出来たことかもしれないわ」

私の言葉に、ジェシカちゃんが顔を上げて私の顔見るので、ちょっと困り顔をしつつも私は話すことにした。

私がどうして、看護師になろうとしていたか。

私の世界での、私の暮らしを……。