「ユウ様、これはどういうことでしょうか?」

聞いてきたのは、四人の中で一番爵位の高い侯爵家の次男坊だ。

もう、名前もうろ覚えだからこんな感じになってしまう。

「おや、君はカーライン家の次男のダラス君だったかな? 君こそ、ここになにをしにきたんだ?」

私に見せていた微笑みとは違う、ヒヤリと冷気の漂う微笑みを浮かべてベイルさんは問いかけた。

「ユウ様に、会いに来た男性がいると噂を聞きまして。私達はユウ様に振り向いていただきたく、必死に想いを伝えていたので……」

だんだん尻すぼみになる声に、ベイルさんは実にいい笑顔で冷ややかに言った。

「では、今後はやめて頂きましょうか。彼女は、私の婚約者ですからね」

私の腰に腕を回して、親密な距離に私を置いてベイルさんがにこやかに宣言したことで、私の元に来ていた四人は一気に顔色を悪くした。

先王陛下の弟を父に持つ、ベイルさんはホグナー公爵家の次男。

そして自身は騎士団の副団長であり、王宮での地位もある。

そんな相手が婚約者にいたのだから、彼らには入り込む隙も無かったのだが、婚約者がいることはまだ話していなかったし、正式発表も来週の予定だった。


だから、婚約を知るのは身内のみだったのだ。

しかし学園生活に私が困るレベルに陥ったことで、公表を早めることにしたようだ。

これで、少しは落ち着くと良いんだけど……。

思考が落ち着くと、今度は腰を支えられて密着したこのベイルさんとの距離感に落ち着かない。

だが、ここは婚約者が困った私を守りに来てくれた人に見せつけるにはいい場面である。

ここをしっかり活用しないと、後が大変になってしまう。

平和な学園ライフを送るためにも今、ここが正念場なのだ。

私は、心の中で唱えて気持ちを切り替えた。(私は女優! 私は女優!)