「本来は多分護衛なしでもやってけるとは思うんだ。でも、護衛が付いてるって見せるのも、ある意味防衛になるから言わなかったんだけどね」

私が笑って言うと、二人はちょっと気まずそうにしつつも言った。

「それでも、貴族というものは面倒でして。権力を傘に着るものもいるのです。そういう輩には、さらに上の権力しか黙らせる術がないんですよ……」

ベイルさんは実に情けなさそうに言うと、クリストフさんが言った。

「俺の名もそこそこだが、ベイルほどじゃない。だから、ベイルとのことは安心で安全な学園生活のためと思ってくれ」


クリストフさんは現状を、不承不承受け入れることにしたようだ。

かなり、納得いかないところがありつつなのはその表情からうかがえたけれど。

そこにあっけらかんとしたジェシカちゃんの声がした。

「ほんと、大人って面倒ね……。まぁ、頑張るといいわ。ユウ姉様は当分渡さないから」

「そうね、存分に頑張るがいいわ。そうそう、簡単には嫁には出さないけどね」

そんな不思議な母娘会話を繰り広げている二人の横で、アラル君は黙々とご飯を食べていたのだった。

このうちで優秀なのは、臨機応変な対応ができるそんな人だ。

アラル君はこんな会話の中でもマイペース。

将来、大物になりそうな気がするわ。

私は、そうして王立学園に編入が決まったという知らせを受け入れたのだった。


「そんなわけで、私からの贈り物は王立学園の制服です。ユウ様が有意義に過ごせることを願っています」


そう言い残して、晩餐が終わるとベイルさんは颯爽と帰って行った。