「ところで、ユウ様は王立学園の最終学年に編入する事に陛下がお決めになりました。それに伴って変な虫が寄らぬようにと、偽装婚約者が私に決まりました」
まるで、明日の天気は曇りだそうですよくらいの感覚で、なんか凄いことを言った気がするのだけれど……。
これにいち早く反応したのは、クリストフさんだった。
「俺は聞いてないぞ! まして、なんで相手がベイルなんだ!」
噛み付くようなクリストフさんの言葉に、ベイルさんが静かに言葉を返す。
「私が先王陛下の弟を父に持ちつつも、王位継承権は放棄しているし、家格的な都合でしょう」
ベイルさん、お父さんが先王陛下の弟で、つまり国王陛下とは従兄弟?
めちゃくちゃ、高位貴族なのは聞いて知ってたけれど、そもそも王族だったってこと?!
驚いている私に、ベイルさんはなんてことないように話す。
「父は母と結婚したくって、継承権放棄して新たに公爵の爵位を頂いて臣籍降下したのですよ。兄は一応王位継承権を維持していますが、私は放棄しました」
実にサラッとした説明だけど実は偉い人だったんだね、ベイルさん!
でも、だからって偽装婚約ってなんで?!
そんな男二人にちょっと険悪な空気が漂い始めた時、マリアさんが声を上げた。
「クリス、落ち着きなさいな」
そう、クリストフさんに声をかけた後でベイルさんに顔を向けると、マリアさんがフフっと笑って言った。