私の戸惑いに、マリアさんが気付いた。

「宰相閣下、黒の乙女もついさっきこの詰所に着いたばかり。女性にはそれ相応の準備がございますので、お時間を頂きたく」

ニコッと微笑んで言うマリアさん、中々の眼力です。

「もちろん、こちらで全て準備してありますので心配ありませんよ」

宰相閣下もいい笑顔で切り返してきました。

なに、この笑顔での怖いやり取り……。

この二人、笑顔でやり合ってるんですけど!?

「入りなさい」

宰相さんが外に向かって声をかけると、ロング丈のメイドさんな格好の女性が三人入ってきて、柔らかく笑いかけられた。

「黒の乙女様、お初にお目にかかります。陛下と謁見とのことで、準備のお手伝いに参りました。私、女官長のシェリーと申します」

一番年上っぽい女性がそう挨拶してくれて、パンと一つ手を叩くと後ろの二人がドレスなどを持って立ち上がった。

「では、団長様。お隣の仮眠室お借り致しますね」

ニッコリ微笑んで、女官長さんが言うと団長さんも頷いて返した。