「ここは妖精の森とも呼ばれているところですが、そもそも気配が分かるのも凄いことなんですよ?」
いや、だって初めから妖精がついてきてる私は、見えるのも会話出来るのも普通のことみたいにしてた。
でも、それって傍から見たら……。
「私もしかして、たまになにもないとこに話しかける、怪しい人になってたって事?!」
思い至って、聞いてみるとベイルさんは首を横に振って答えてくれた。
「黒の乙女は別名、精霊王の愛し子ですから。妖精が見えてコミュニケーションが取れるのは、それこそ証みたいなものなので」
なるほどね……。
だから、誰も空中に話しかけるような状態にしか見えなくってもツッコミは入らなくって、私は周りは見えてないってことに気づかなかったわけね……。
「黒の乙女って結構有名なの? そういったことが、国民に伝わるくらいに」
だって、知らなかったら不審な怪しい人にしかならないのに、誰も聞いてこないってことは、黒の乙女についてはある程度国民みんな知ってるってことになるかと思うからだ。
「黒の乙女はこの国イベルダに存続の危機があると現れると言われている存在で、絵物語にもなっているので、幼い子でも知っていますよ」
そういう存在なんだね、黒の乙女……。
乙女って柄でもないんだけどなぁ。
私、王都に行って大丈夫なんだろうか。絵物語になるって、相当美化されてる存在だよね?! 不安しかない……。
ついつい頭を抱えていると、クリストフさんがカッカと笑って言った。