「黒の乙女。なにをなさってるんですか?」

あ、あれ?下手に動いちゃいけなかった? でも、あのお鍋は放置したら誰も食べられなかったと思うんだけれど……。

「騎士さん達の作ってたお鍋が、私についてる妖精さんでも顔を顰めてたから、ちょっとお手伝いを、ね?」

私の言葉に、なんとなく察したらしいベイルさんは深くため息をついたあと、若い騎士さん達にニコリと笑って言った。

「君たち、今度食堂のメリッサに調理を習いなさい。いいですね?」

キラッとモノクルを光らせて言う姿には、ハイという返事以外認めないという威圧感と冷気があったのでした……。

ベイルさん、怒らせちゃダメ、絶対。

私は、一つ覚えたのだった……。

私が手伝ったお鍋はいつもより良かったらしく、騎士さん達の旺盛な食欲により、見事綺麗に空になった。

うん、気持ちよく食べてくれて良かった。

「ユウ様。本日はこの天幕でお休みください」

なんと、準備されてた天幕のうち一つは私専用だったらしい。

いいんだろうか? 皆さん結構大人数で使うのに。

「ユウ様は、黒の乙女ですからね。順番に護衛も着きますので、安心してお休みください」

こうして、再び強い眼光でベイルさんに押し切られて、私はこの日広い天幕で私とアリーンとサリーンで休んだのだった。