「黒の乙女は、総じて強い魔力を持ち治癒術に優れている。それは伝承にも書かれている。そこにはさらに、追記があってな……」

さっきまでの明るさは引っ込んで、団長さんは真剣な表情をして言った。

「いつの時代に訪れても、黒の乙女は戦の中に訪れる。乙女は国を平和へと導くだろうと記されている」

まさか、癒すための治癒術以外でも私はここで、なにかを求められるのだろうか。

魔法は色々使えると思う。アリーンやサーリンが言うには想像力が魔法の成功に威力まで左右するというのだから、想像力があれば結構あれこれ出来るものみたいだ。

私は本を読むのが好きだったし、ファンタジーも色々読んだ。

魔法も、いろんな生き物も、想像のものをいくつも読んでは小さな頃は思ったものだ。

もしも、魔法が使えたら……ってね。

そんな私が異世界で魔法が使えるようになっている今、使わないという選択肢は無い。

しかし、それは人を攻撃するのには使いたくないのが本音である。

「そうだ、今想像した通り。歴代の乙女達は前線に立って魔法を用いて戦い、癒していたらしい。しかし、俺は反対だ」


団長の言葉にハッとして、考えながらいつの間にか俯いていた顔を上げた。

「俺はな、こんな可愛いお嬢ちゃんを戦場には立たせたくねぇよ。そういや、名前はなんて言うんだい?」

私は、ここに来てやっと聞かれた名前について答えた。

「三島 優羽。妖精達はユウって呼んでるから、そう呼んでくれると嬉しい。私、魔法を攻撃には使いたくない。守り、癒すために使いたいと思う」

こうして、私は自分の意思を表明しつつもこの砦の現状をどうするかを、考え始めていたのだった。