そんな私の視線に気づいたのか、団長さんはニカッと笑うと腰を屈めて視線を合わせてきた。
「黒髪、黒目。確かに伝承通りの容姿だな。お嬢ちゃんが黒の乙女で間違いなさそうだな。お嬢ちゃんのおかげで、俺は命拾いしたしな!」
カッカと豪快に笑う、この人。ちょっと前までかなりの重症で倒れていた人とは思えないよね……。
治癒術ってこんなに効くものなのかと、よく分からぬまま首をひねっていると、団長さんの背後から落ち着いた声がした。
「団長。しっかりご挨拶なさってください。本来早く王都にお送りせねばならない黒の乙女に、こちらに来て頂いているのですから」
声の主は、団長みたいではないけれど、無駄のないスッキリした体をしており、細マッチョって感じで、キリッとした目の片方にはモノクルを付けていて、団長さんよりは理知的な雰囲気がある男性だった。
「すまん、すまん。黒の乙女、助けてくれてありがとうな。俺はイベルダ王国騎士団、団長のクリストフ・アルバ・ミレイドだ」
団長さんは、快活なイメージそのままに話してくれた。
「団長が失礼ですみません。私は王国騎士団、副団長のベイル・カール・ホグナーと申します」
もう一人の男性が副団長さんだったとは。
ここに騎士団のツートップが揃っていていいんだろうか?
国の守りは大丈夫なのだろうか?
ついつい、この国の住人ではないのにそんなことを心配してしまう。
「この団長が重症との早馬が来ましたからね。普段は、私は王都に詰めていますよ」
少し、表情を穏やかにしたベイルさんがそんなことを言う。
え? 私、声に出してないよね?