夜は近隣の村の男性と騎士で組んで、砦から周囲の見回りをするという。

ここに攻めてきているのは西の国で、国名はアビエダというらしい。

砂漠とオアシスのある国だとか、子ども達も大人から聞いて知っただろう知識を、ごはん時に私に話してくれた。

ここ南の国イベルダは穏やかな気候と豊富な作物が育つ土地、宝飾品加工も随一の技術を持ち、騎士団も周辺国の中では最強だという。

なにより魔法研究も盛んで、国内には結構な人数の魔術師もいるらしい。

そんな発展している国にそれでも立ち向かうのは、アビエダからみるとこの土地が魅力的なのだろうと思う。

私の世界でも砂漠では作物はなかなか育たない。

国土の三分の二が砂漠で残りがオアシスで、その周辺に国民は住んで街を作っているらしい。

そんな土地からしたら、イベルダは魅力的な気候と土地なんだろう。


「土地って言うのは、そこそこに特徴があるから仕方ない。ただ、それを他国侵略の理由にしていいものでもないよね……」


私はここに来たばかり。しかも自分のいた日本では、過去には他国と戦争をしていたこともあるが、現在は戦争はしていなかった。


「私は、ここでなにが出来るんだろう……」


かがり火の灯りの中、静かに夜空を見あげれば、そこには日本じゃなかなかお目にかかれない満天の星空。


「こんなに環境が良いんだもの。美しく、近隣諸国とも平和に出来ればいいのにな」


平和ボケしてると言われようと、私は争うより、上手く手を取り合い平和に過ごせる方が望ましいと思う。

そこの考えだけは、曲げずに持っていたい。

この国と、隣の国との現状を見て傷を癒して、少ないもののここで過ごして感じた事は大事だと思う。


「ユウ。冷えてきたわ。砦の中に入りましょう?」


一緒についててくれた、サリーンとアリーンに促されて私は中に戻ると、ジェラルドさんに声をかけられた。