夜の間、ずっと馬で駆け続けてたどり着いた西の砦は、私自身が現実で直面したこともないテレビ画面の向こうに見ていたような惨状だった。

騎士達は汚れ、傷つき、なんとかこの砦を死守しているような状態。

この付近の住人もここが一番安全なのだろう、砦に避難してきてるようで子ども達は片隅で大人しくしているし、動ける男達は騎士に加勢し傷を負い、女の人達は煮炊きをしつつ、怪我人の傷の手当に奔走しているのがうかがえる。

埃と、汗と、血の匂いに混じって煮炊きの匂い。

とっても複雑だが、ここの人々がとてつもなく疲弊し、弱っているのは分かった。

昔、歴史の教科書で見た戦争の写真や他国での紛争や戦争などのテレビの報道でしか見なかった惨状が私の目の前に広がっている。

現実として、自分の目の前に突きつけられた。 ここで私になにができるのだろう……。

立ち尽くす私に、ジェラルドさんが言った。


「申し訳ありません。まず、一番の重傷者をあなたには癒していただきたいのです!援護に来てくださった王国騎士団の団長が、街の子どもを庇い重症なのです……」


険しい表情から、その団長さんがかなりひっ迫した状況にあることを見て取った私が頷いたのを確認すると、ジェラルドさんは私を砦の中に案内した。