最後は堪えきれなくって、零れた涙は苦しさからではなく、見つけられたことへの安堵と嬉しさからだった。
だって、私は微笑みながら涙を零していたんだもの。
そんな、私を見てベイルさんは私の涙を拭って微笑んだ。
「ユウ、ここに指輪を贈ってもいいか?」
コクっと頷いた私の左手薬指に、シンプルなリングは収められた。
キラリと輝くのは、小さな石がついているから。
それは今日贈られて、着ているドレスによく似たピンクの石だった。
「綺麗……」
私は、付けてもらった左手を眺めて呟いた。
「ユウ、私にも付けてもらっていいですか?」
その一言で、彼の手にある指輪をつまんで彼の左手薬指に嵌めた。
その手で、私の手を掴んで顔を合わせてベイルさんは言った。
「ユウ、私と結婚してください」
「はい。私をベイルさんのお嫁さんにしてください」
私の返事にとっても嬉しそうに微笑んだ後、ぎゅっと抱きしめられた。
ドキッと心臓が跳ねる。
それを素直に受け入れると、鼓動は弾みつつも気持ちは和やかになっていった。
「これからは、遠慮なく甘やかしていきますので。覚悟してくださいね?」
和やかだった私の気持ちは、また簡単に跳ねあげられてドキドキと忙しなく、顔はちょっと赤くなってることだろう。
私はこの世界に来て諦めていた家族を、自分で掴むことができたような気がする。
こうして、私の仮初だった婚約は本当の婚約へと変わり、もう待てないと急ぎに急いで、ベイルさんの希望によってこの日から二ヶ月後が結婚式の日取りとして決まったのだった。
デキル男は、何事においても行動がはやいのだった。
そして、私は宣言通りその後はとっても甘やかされて、愛されていると感じる満ち足りた日々を過ごしている。
それは、私が望んだ平和で平凡な日々とはちょと違うけれど、案外幸せでくすぐったいけど心地よいものであった。