「私、ベイルさんは騎士で貴族で地位もあるから、私ではダメだと思ってた……」
初めて出た、私の言葉にベイルさんは少し目を見張ったものの、キュッと繋いだ手に力を込めて言った。
「それで、どう思っていたのですか?」
「仮初だから、きっと戦争が落ち着けば解消されると。だったら早く解消できるように、国が落ち着くようにって動いたの。このままじゃ、苦しいから……」
私は、だんだん落ち着いてきたところで呼吸を二つ。
そして言った。
「だって、ベイルさんは相応しい貴族の令嬢が相手だろうって。私じゃないって思うと苦しかったから。だって、私も一目であなたに惹かれていたから……」
私の言葉に、ベイルさんが息を飲んだのが俯いた先にある握られた手から伝わった。
「私が、悪かったです。あなたを苦しませて……。許してくれるなら、この手を取ってください。一緒に、幸せになってください」
一緒に、その言葉が私の心に一番響いた。
ぎゅうぎゅうと締め付けるような想いだった、そこにふわっと包むような温かさが胸に染み込んできた。
あぁ、私、この人と一緒にいたい。
幸せになりたい、一緒に……。
そう、素直に思えた。
だから、私は握られた手を、握り返して顔を上げた。
「一緒にいたい。私があなたを見送ることになっても、それでもその時まで、あなたと居たいの」