「あぁ、やはりユウ様にはこのドレスがお似合いですね。とっても美しくて、これから一緒に過ごせることが幸せです」
本当に嬉しそうに、目を細めて私を眺めているベイルさんはお仕事の時とは全然違う、貴族の貴公子然とした、クラバットにロングジャケット姿だ。
その姿はやはりハッとするほどの美形で、隣が私でいいんだろうかという気持ちはやはり湧き上がる。
「ありがとうございます。私みたいな小娘が一緒でいいのか分かりませんが……」
ちょっと気落ちしながら言うと、ベイルさんは言った。
「ユウ様。ユウ様のような若く美しく、優しくて強い。そんなあなたの相手が私であることの方が、存外プレッシャーになっておりますよ」
まさかね、だって私はそこまですごくない。
「ユウ様、とにかく話は出かけから。今日はあなたに大事な話があるのですから」
差し出された手に、手を重ねて私はエスコートされて馬車に乗り込む。
その時、私たちのやり取りを見守っていたクリストフさんは声をかけて言った。
「ユウ、お前の望む通りに。素直に気持ちは言葉にしろ!嫌だと思ったら、それも言え! お前は俺の娘だ。だから好きに生きろ、生きていいんだ」
「ありがとう、パパ。行ってきます」
私は、ここに来て本当によかった。
失ったものが、再びこの手に乗ることがあるなんて、ここに来るまで思いもしなかったから。
私の言葉に、クリストフさんが笑顔で言った。
「どうなろうと、俺達は家族だからな。それを忘れるなよ」
その一言に、送り出されて私はベイルさんと出かけたのだった。
自分の気持ちを、きちんと伝えるために。
たとえいい返事じゃなかったとしても、私には私を受け入れてくれる家族がちゃんといるから。
頑張ってみようという気になった。
私にとって、自分のための小さな一歩だった。