ベイルさんは、そう言って私を見つめて言った。

「私はなにがなんでも、今回ユウ様のそばを離れる気はありません」

ベイルさんの言葉に、メルバは頷くと言った。

「そちの、願い。あい、分かった。騎乗を許そう」

メルバの許可に、ベイルさんはようやく表情を緩めた。

「ありがとうございます。ユウ様、今回はずっと側に居ます。いいですね?」

その問いかけに、私は、頷いて返事をしたのだった。



開戦宣言をされた、当日。

その日は見事な、快晴だった。

「さぁ、行きましょう。メルバ、ベイルさん」

私はメルバと、共に乗るベイルさんに声をかけてメルバに跨ると、メルバはファサっと翼を生やすと、一蹴りで天へと駆け上がっている。

メルバは正確に言うと、天虎というものらしい。

翼を持った虎で、空を駆けることの出来る唯一の聖獣として、この世界アジェンダで有名な伝説の生き物だった。

そんな生き物の背に乗る人なんて、そうそう居ないだろう。

この状態で、戦場に現れるだけで一気に戦局は動くと予測していた。

そして、敵陣上空に差し掛かった時、それは間違いないと悟った。

下からは、戦く声がこだました。

「伝説の天虎が現れた! この戦は間違いだ! 撤退せよ!」

そう叫んでいたのは、東のシェーナの人々。

きっと彼らは、西の国に色々聞かされて参戦したのだろうが、天虎が現れれば、間違っていたことに気づいたんだろう。

「天は、この戦いに我らの間違いを指摘なさっておる!」

メルバの姿は、それだけこの世界では神とも取れるものなのだろう。

メルバに聞くと、聖獣という生き物はこの世にメルバを含めて四体しか居ないのだという。

他のものは、あまり人を好まないので、姿が人に知られているのは自分なのだと言っていた。