それは過ごしやすい気候や作物の育ちやすい土、きれいな水。

そういった全てに、干渉しやすい存在が妖精や精霊だ。

その存在を認め敬い、親しき隣人として過ごしてきた国民性が、この国を豊かにした一因でもある。

元から良かったものが、さらによくなるにはそれなりに理由があるのだ。

それを分からずに、攻めてくる国にはやはり問題があると思う。

そして、私は関わことのある人々の危機を見過ごすことは出来ない。

だから、元から行く気だったのだ。

「この国で最初にお世話になった人達なので、私はそこに住む人々を守りたいです。それが、私に出来ることだと思うので……」

心から、そう言ったとき。

私の足元に常に共に居た猫のメルバが、パァーっと光を発した。

光が落ち着くと、そこにはいるのは立派なホワイトタイガー。

「メルバ? 大きくなったってレベルじゃないよね?」

現れた巨躯に思わず、突っ込んだのは仕方ないと思う。

「当たり前だよ、我が主。主の心の望み、強き思いで我の呪縛が解かれたのだ」


ホワイトタイガーから男性の美声が話しかけてくるという奇妙な状況だが、アリーンとサリーンから受けていた忠告のおかげでなんとか平静を装っている。

「メルバ、あなたは一体?」

私の問いに、メルバはあっさりと答えた。

「我は、風の聖獣よ。サリーンと近しい存在だな」

聖獣!? それは喋る動物で認識は良いのだろうか?

やはり、私も少しばかり混乱している。