そうだろうなと思っていた、その提案がなされたことに複雑ながらも納得して私は頷いた。
「はい、もちろん。此度の戦はこの前よりも厳しいものになることは、予測がつきますので。ですから私は元から西の砦に赴く所存でありました」
西の砦には、私を始まりの村に迎えに来てくれた辺境騎士団の騎士が居て、その周辺に住む住人達は私を暖かく迎えてくれて、子どもたちとは同じ毛布にくるまって寝たのだ。
そんな過ごし方をした人々のいる地に、再び他国の手が伸びようとしている。
それを知って、私には戦う力も傷を癒す力もあるのに戦の前線に行かないなんて選択肢は、私の中ではなかったのだ。
自ら赴く気でいることを、お願いされるのもおかしなことだなと思いつつも、私は元から行く気だったこともありすんなり了承したのだった。
あまりにも、あっさりと承諾したので王族の面々と宰相のガルムさんは驚いた顔をするが、警備で居たベイルさんとクリストフさんは予測できていたらしく驚いてはいなかった。
しかし、二人の顔は顔はしかめられていた。
「良いのか? 戦の最前線とは命の保証がないのだぞ?」
国王陛下は、あまりにもすぐの承諾に私に危機感がないと思ったらしい。
言って欲しい割には矛盾した言葉だなとは思うが、国王陛下の人となりがわかるその言葉に私は逆にホッとする。
人を思いやれる人が国のトップに立っているということに。