「…ったく……手間がかかる…」
いつになっても殴られる痛みは襲ってこなくて、代わりに私を襲ってきた男子が倒れているのが見えた
「……え…?」
しかも……幻聴かな
「大丈夫かっ…。椎名…」
「……っ…!」
暗くてよく見えない
……だけど分かる
ずっと見てきたから
私が1番…ずっと見てきたんだから
好きすぎて…どうにかなってしまいそうだったんだからっ…
「せ…や…っ…?」
暗闇の中で、どんどん男達が倒れるのが分かる
そしていつの間にか、辺りは静かになっていた
「……」
泣いてしまいそうだ
息を着くだけで涙が零れそう
見られたくなくて、ずっと下を向いていた
これ以上冷たい目を向けないでほしかった
なのに
……ー彼には簡単にバレてしまう
顎をクイッと持ち上げられた
暗くてもバチッと目があう
肩で息をしている誠也
走ってきてくれたんだと、ひと目でわかる
私は誠也の瞳を、誠也は私の瞳をじっと見つめた
…あぁ…私…ダメかもしれない…
この人といると…壊れてしまうかもしれない
辛いよ……誠也っ…
「……お前…あいつらに何され…」
「っ…助けてくれてありがとう!もう大丈夫。ほんとに…ありがとねっ…」
立ち上がって頭を下げてお礼をした
「椎名…俺」
「…ごめんっ…じゃ…私行くね…!」
私は彼の言葉を遮り、1人になりたい時によく使う裏庭へ走って向かったー……