悠真side
彼女は一言で言えば、綺麗だ。
漆黒の髪に白い肌、そしてお人形のような顔をしていたのだから。
最初この施設で初めて彼女を見た時、何故か全身血塗れで、虚ろな表情をしていた。自分の事も分かってないし、ここがどこだかとか、そんなことすらも分かってない状況で。
彼女は推定15歳前後。
信じられなかったよ。
だって、名前すらも覚えていないのだから。
院長が「仁奈」と名前を授けた。施設じゃ珍しく無いことであるが、年齢が15当たりだとそりゃビビるだろうね。
シャワーを浴びた後に、彼女の傍に居てあげて欲しいと院長から頼まれたので、暫く一緒にいたが、何も話そうとしない。
まるで人形のようだった。
相当なショックを受けたのだろう。
ほんとに同じ歳なのか?と思うほど何かが自分の1歩先を行ってるような雰囲気を持っている彼女に、心の高鳴りを隠せないでいた。
一目惚れってこういうことを言うんだろうなと思う。こんなにも儚げで今にもガラスのように破れてしまいそうな彼女はとても美しかった。
こんな気持ち初めてだった。
女の子は俺を見るとすぐに寄ってたかってウザイほどなのに、彼女はそんな空気一切魅せない。本当、天使かと思ったよ。
いつもクールで何を考えてるか分からない。
またそこがいいのだけれど。
こんな気持ちどう表現したらいいか分からず、俺は彼女に対して上手く接することが出来ないでいた。
そして今日だ。
遂に彼女とお別れの日がくるなんて…。
そんな簡単に諦められる俺でもなかった。
勝手に彼女と同じ大学に受けて合格済み。
離れていくほっそりとした後ろ姿を見つめながら、少年は微笑んだ。
がんばれよ…
なんて言えるはずもなく。
最後の日まで(退所の日)意味深な事だけ下手くそにも告げて出てしまった。
待ってるよ、、
仁奈