私はそうやって高校を無事卒業した。



高校に通いながら、バイトで貯めていたお金で大学に通おうとしたが、施設の人から猛反対がきた。

所長と私は口論になった。

「…!!だから、里親が見つかってからじゃダメなのか!?お前はいつも1人で生きてこうとしてて、ひとつも探そうとしないじゃないか。それではここを出ては行けないのだよ?分かるかい?」

「もう私は1人で生活して行けます。所長、どうかゆるしてください。」

何を言っても首を縦に降らない所長。

「仁奈。お前のためを思って言っているのだよ?」

本当に、そうかしらね?
あなたが思うより、私は強くないわ。

里親なんて、はなから探してない。
もともと一人で生きてくつもりだった。

里親が見つかることが幸せじゃないんだよ私は。



せめて記憶さえ戻れば……



【「記憶はあなた自身の意志で何かとてつもない精神的なショックを受けて消えたようですね…戻るかどうかは分からない。忘れたいとあなたが願ったような感じだね」】



医者の言葉なんて……私はじゃあどう生きろというのかしら。



大学へは行きたい。
そして就職して1人で生きていけるようになりたいのよ。

わたしには何もない。

だからこそ何か一つでも自分に出来ることを、

何か自分を誇れるものを


創りたい。


ただ、それだけなのに。