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バタン



「杏奈か。」



小池さんの部屋に帰ると
仕事の合間の休憩中なのか、
スーツのまま、畳の上に寝転んでいた。


「会ってきたのか?」

「…」


私は横になっている小池さんの上にまたがった。


「なんだ?」


黙って服のボタンに手をかけると
小池さんはそのまま手を伸ばした。


「何かあったのか?」


そう言いながら、私の頭を自分の方に引き寄せ、唇をくわえた。


さっきまで煙草を吸っていたのだろう。


煙草の味がする。

不味い。


有もいつも煙草吸っていた。

キスしたら、煙草の味がするんだろうなって思ってた。


そんな日は来なかったけれど…


目を閉じるとすこし有を感じる気がして
胸が熱くなった。