(ぶたれる!)



「やめろ!」


その声に顔をあげると、杏奈さんの腕を佐倉さんが掴んでいた。


「佐倉さん!」

「電話したけど出ないから、ここにいるだろうと思って…」


佐倉さんは杏奈に向き直ると
腕を掴み上げた。


「お前!勝手なことしておいて、何してるんだ!」

「…っ!!」


杏奈さんは佐倉さんの腕を振り払うと
人混みに紛れるように走り去っていく。


「あ、杏奈さん!」


急いで追いかけたけれど、もう姿は見えなかった。