近い…

有がいつも吸っている煙草の香り。

珍しい種類なのかな…

他の人からはあまり香ったことがない。



「ひま…」

「な、なに…」


何故か距離を詰めてきた有の胸を押し返すと
その手首を掴みとられた。


「ち、近いよ…」

「…ひま。」


その目はいつもみたいな
ふざけた目ではなく


少し淋しそうで
少し飢えた目。


「ねぇ…なんで、杏奈が来てた?」


ドキン…


「知らない…よ。」


小池さんのことは、まだ言わない方がいい気がしていた。


でも
有は何か勘づいているのかもしれない。

有は鋭いから…


「嘘。」

「嘘じゃない…」

「お前うそなんて、すぐ分かるから。」


ドキン

息苦しくてうまく息が吸えない。


「…俺の部屋、来いよ。」


そのまま手首を引くとそっと腰を引き寄せた。


「…な、何言ってるの?ふざけないで…」