「杏奈。くうか?」


俺は捜査の途中に部屋に立ち寄って
近くの弁当屋で買ってきた弁当をテーブルの上に置いた。


あそこの弁当は唐揚げがむちゃくちゃうまい。



あの日、杏奈は一度出ていったのに
なぜかここに戻ってきた。


理由は分からない。


一方、晴人はどうやら自力で組から逃げ出したようだが、
行方は分かっていない。


連絡も通じなかった。



そもそも
俺と杏奈には何のつながりもない。



晴人に頼まれていたとはいえ
はっきり言って、かくまう義理はない。


だが、俺は杏奈をなぜか放っておけずにいた。


晴人もこんな感じだったのだろうか。


杏奈は美しい。

ただそこに存在しているだけでも十分男を惹きつける魅力があった。


この汚いアパートにこんなにも美しい女性がいる。


その異質感に酔いそうだった。