「あ、そうだ…これっ!」


唯ちゃんは振り返ると、
大きく振りかぶって何かを遠くから投げた。



「わ。」


それをキャッチして
手のひらを開くと防犯ブザーだった。


「なんかあったら使いなさいよ。」

「うん!」


唯ちゃんの優しさに触れると
いつも泣きそうになる。



「…ありがとう。唯ちゃんって投げるのうまいんだね!」

「なめんじゃないわよ。これでもずっと野球少年だったんだから。」

「唯ちゃんの坊主…かっこよさそうだね!」

「バカ!」



唯ちゃん大好き…

ありがとう。



私は唯ちゃんが廊下を曲がるまで
その背中を、ずっと見つめていた。


もう会えないかもしれない。

そんな不安を抱えながら…