吉祥寺のいつもの居酒屋。

お気に入りのワンピースをおろし、
いつもなら10分のメイクも1時間かけた。

20分前に吉祥寺のバスロータリーにつき、
アトレのトイレでCHANELの新色リップを
つけたら、準備万端だ。

10分前に店につき席に座った。もちろん一番乗りだ。
一番初めに来たのは、短髪でスーツ姿がよく似合う隼人だった。

「久しぶりー!元気だったか?咲良は彼氏でもできたか?」

「できてないわよ!隼人はデリカシーがないの!笑」

「わりぃわりぃ」

隼人は、お調子者でたまにデリカシーがないが、愛されキャラで人気者だ。

「おつかれー」


振り向くと、ちょっと無造作に整った髪型で、スーツ姿の隼人とは対照的にカジュアルな格好をしてる蓮の姿があった。


「うおお!蓮!久しぶりだな!!」

「相変わらず隼人は元気だな笑」

蓮はちょっと呆れた感じだが、優しく笑った。
私は彼の笑った時に細くなる目が好きだ。

「おう!元気だぜ!そういえばお前ちょっとかっこよくなったな?彼女でもできたか?笑」

またか。私は呆れた顔をした。
隼人の挨拶はいつもこれだ、彼女がいる奴の余裕なんだろう。

最初、隼人が蓮に聞いた時、心臓に悪い思いをしたが、今となっては何も思わない。
答えはいつも、私と同じだからだ。




「いや、できた。」






えっ。と言いかけた言葉を飲み込んだと同時に
目の前が真っ暗になった。


「おつかれー!遅れてごめん!!」

里奈の少し甲高い声が私の鼓膜を震わせた。


そこから先は、記憶がない。


正気に戻ったのは、翌日の朝だった。
そして、私はあの頃の日々を思い出していた。。