「信じなきゃ駄目なのに、私って嫉妬深いね」
「里花はそのくらいの方がいい。俺は絶対に裏切らないって約束するけど、里花が不安なときはいくらでも追及してくれよ」

今回は俺が悪かったし、と付け足し謝ってくれる奏士さんは優しいのだ。私が以前の結婚で負った傷をまだ気にしてくれている。不安にさせまいとしてくれている。

「あなたに捨てられたら生きていけない」

私は呟く。優しく手を握り返してくれる奏士さんを見上げ、宣言する。

「だから、絶対に奏士さんを離さない。重たいかもしれないけど、これが私の絶対だから」
「重たいどころか嬉しいよ」

奏士さんが微笑む。

「里花は本当に強くなったなぁ」
「褒めてるの?」
「褒めてるよ。ところで、お腹が空かないか? 何か食べて帰ろう」

忘れていた空腹がゆるやかに蘇っていくのを感じる。奏士さんといれば、きっとなんだって楽しい。同棲初日からびっくりしてしまったけれど、これも私にとって小さな試練のひとつだったのかもしれない。

「賛成。ラーメンはどうかしら」
「いいね、そうしよう」

夏の夕暮れ時、私と彼は手を繋ぎ、ラーメン店を目指した。