日本にいるひと月ちょっとの間は、なるべくたくさん会おうと奏士さんと約束をした。
彼は仕事上のトラブル対応でやってきたので、最初の一週間は初日のデート以外は会えなかった。一段落した頃にデートの日取りを決めた。

私と奏士さんは子どもの頃から知っているけれど、離れていた期間も長い。互いのことをもっと知り合うのは大事なことだ。食事をしたり、ただ散歩をするだけでも、私たちには大事な時間。交際と結婚を考えているからこそ、時間をかけたい。

そんなわけで私は今日のデートも楽しみにしていた。朝からウキウキと仕事を片付け、定時に上がれるように調整する。由朗には浮かれていると揶揄されたけど、そんなに浮ついていない。業務に支障は絶対に出さないもの。
しかし、昼過ぎに連絡が入った。

【里花、すまない。今日の約束を延期してほしい】
【会食の予定が入った】

このメッセージにはがっくり来てしまった。思わず自作のお弁当の卵焼きを落っことしてしまったくらい。
いや、ここで落胆を見せると奏士さんが気に病む。私はカラ元気でメッセージを返す。

【わかりました。それじゃあ、別な日に。今週の夜は都合つけられるので、奏士さんが決めてください】
【焼肉を食べてみたいので連れていってくださいね】

ちょっと無邪気な我儘を挟んでみる。気にしていない感じが出ているかな。