平日夜の観覧車は人気もまばらだ。ほとんど並ぶこともなく乗り込む。
小さな箱はゆったりと上昇していく。お台場や都心の夜景が見えた。船舶の灯りが光る海も空港も見える。

「綺麗。夜の観覧車ってすごく特別な感じ」
「冬は空気が澄んでいるから、余計にはっきり見えるなあ」

奏士さんと並んで見ると、いっそう世界はキラキラ光り輝いて見える。気づけば奏士さんが私の手をぎゅっと握っていた。手を繋いでいたのとは違う。両手を大事そうに包んでくれる。

「あったかい、奏士さんの手」
「里花の手は冷たい。それにちっちゃい」

そう言って、奏士さんの綺麗な瞳が私を捕まえる。

「里花、好きだよ」

私も、と答える前に唇を奪われた。最初は柔く重なった唇は、すぐに離れ、その後何度も何度も重ねられる。やがて角度を変えて深く重なる。
知らず逃げ出しそうになっていた身体を奏士さんの腕が捕えた。抱きすくめられ、逃げ場を奪われ、ゆっくりと貪られる。侵入してきた舌を迎え入れたのは、もはや反射の領域だった。本能が言っている。彼がほしいって。

「ふ、……う、んん」

思わず鼻に声が抜け、自分から漏れる甘ったるい音に驚いてしまった。そのまま何分も、私たちは互いを味わった。私にできることはほとんどなく、翻弄されているだけだったけれど。
やがて、奏士さんがそっと唇を離した。
黒い瞳は情熱的に私を射貫いている。