聞いてよ、真山。


目の前のワイシャツをぎゅうっと握りしめた。



「真山…」



必死に。溢れそうな何かを抑えながら名前を呼ぶ。


すると真山はムッとした不機嫌とはまた違う表情を浮かべて、私のことを離した。




「…くそ。その顔やだ」


「え、」


「かわいーのずるい。なにもできなくなる」



可愛い

そう、聞こえた。



「ま、真山…今なんて」

「うるせー。ばか。ばか瑚波」


「な、なに急にっ。ばかって言う方が…」


「もーやだ俺ばっか。
告白されてる瑚波なんかきらい」



そう吐き捨てて
真山は膝に顔をうずめてしまった。

ふわふわと、茶色い猫っ毛が揺れている。