だからだろうか。

完全にそっぽを向く真山の横顔に
胸がほんのりいたい。



「…真山ってば」



自分でもわかるほど弱りきった声。

響くなんて表現に達しないくらい
か細く廊下に溶けていった。





すると


ふいに視界が陰る。




やわらかに、それでいてしっとりと何かが触れたのは唇の端。

何が起きたのかわからなかった。




「キスされてんじゃねーよ、ばか」




真っ白な思考に、するりと入りこんできたのはそんな声。


まぶたを瞬かせれば、やっぱり機嫌の悪そうな真山の顔がすぐそばにあった。