「その人がどうしたって言うの?」

あえて名前を言わなかったのは2人で過ごした日々を思い出したくなかったから。

せっかく、忘れようと努力しているから。

なのに‥‥‥。

「5日後、貴方は学校帰りに高橋 晴人さんに偶然会います」

何も知らない死神はそう言った。

‥‥‥晴人に会いたくない。

今更会って話すことなんてあるのだろうか。

そんなモヤっとした葛藤は次の死神の言葉によって掻き消された。

「その帰り道、貴方は近くにいた通り魔によってナイフで殺されます」

「通り魔!? そんなのいるわけないじゃん!」

怒りが増してくる。

何かの嫌がらせなのだろうか。

「残念ながらこの世界にはいるのです」

声を低くして言った死神の言葉が私の心の中にドスンと入った。

未だに死神の表情から何一つ読み取れないのに、その言葉の重みは確かだった。