ミントの鼻を抜ける爽やか過ぎる匂いに、
なんだかよく分からない花のフローラル過ぎる匂い、あと他にも薬品臭い何かに、ものすごく酸っぱい何か。

これほんとにのど飴って名前であってる?

「市販ののど飴は効果ないから、希空特性」

医者の卵である希空ちゃん。
確かに効用は期待出来るかもしれないけど…
味が…大変なんだよ!

苦い顔でその飴を舐め切ると、
不思議と喉の詰まり感は無くなった。

「ん…これで普通に話せる。」

確かに喉がスースーして苦しくなさそう。

「ありがとう、希空ちゃん!」

その一言で、希空ちゃんは嬉しそうに顔を緩めた。

私も嬉しくなって、明日の学校生活を思い浮かべた。

(そうだ、蓮くんとは明日―)

そこまで考えて、沈む。

「蓮くん…」

その名を口にすると、4人の姉妹がピシッと固まった。

「…紬、正直に聞くわ。」

心配そうな顔をしていた花恋ちゃんは、
厳しい顔つきになって私に問いかけた。

「あなた…蓮くんとどうなりたい?」

真っ直ぐに目を見つめられて、私はなんと言ったらいいのかわからなかった。

「…れ、蓮くんとは…しばらく、どう接したらいいのか分からない…」

これが素直な気持ちだった。

「そう…」

花恋ちゃんは残念そうな顔をしながら、
私の頬を撫でた。

「それなら、会いたいと思うまで会わなくていい。一緒に帰らなくていいから、車で帰ってらっしゃい。」

「うん…」

自分でそう決めたくせに、自分でわかるくらい悲しそうな声だった。