フィオナとエヴァン、そしてシオンは早速被害にあった動物園へとシオンの運転する車で向かう。

「一体どんな動物が盗まれたんですか？」

エヴァンが真剣な顔で訊ね、ハンドルを握るシオンが「たくさんの動物が盗まれた。えっと……」と思い出そうとする。しかし、動物が盗まれる事件は増えているため、思い出すのは大変な作業だろう。それを見たフィオナは口を開いた。

「シオンさんは運転に集中してください。私の能力を使います」

「助かる」

シオンとミラー越しに目が合う。赤い瞳と黒い瞳が混じり合い、フィオナはこの時初めて自分の瞳が捜査に対して興味を抱いていると言うことを物語っていることに気付いた。感情など何もないと思っていた自分の心は、完全に死んだわけではなかったのだ。

フィオナは大きく息を吐き、頭の中を空っぽにする。すると、頭の中に映像が浮かび始めた。

深夜、誰もいなくなった動物園の駐車場に怪しげな巨大なトラックが停まる。ナンバーは残念ながら見えなかった。そのトラックから黒ずくめの格好をした数人が降り、動物たちに麻酔を打ってトラックに荷物のように積んでいく。