ジニアが僕の頬を優しく舐める。涙を拭ってくれているんだ。こんな時にも優しいジニアに、泣いているのに笑顔が生まれてしまう。

「ありがとう」

またジニアの声が聞こえた。胸がギュッと苦しくなる。口から嗚咽が漏れた。

「僕の方こそ……ありがとう……!僕のそばにいてくれて、僕に獣医になりたいって夢を与えてくれて……ありがとう!……何回言っても足りないくらいだ……」

ジニアの寂しげな目に、ふわりと優しさが混じる。もうお別れの時間だ。僕も必死に口角を上げて、笑った。その間も涙は止まらない。

「わすれないで」

ジニアがゆっくりとその目を閉じた刹那、そう聞こえた。そして何も聞こえなくなる。ジニアは天国に旅立ったんだ。

「うん……忘れないよ……。絶対、忘れない……」

ジニアを抱き締めて、泣きながら約束する。ジニアを失ってから、さらに動物が愛おしくなって大切になった。

動物にも命がある。心がある。それを無視する人間を許すことなんてできない。そして僕は、「動物の声を聴く力」を手に入れた。


エヴァンは資料をずっと見つめたままだ。シオンたちがエヴァンを見つめ、フィオナはエヴァンの肩に触れた。そして声をかける。