「ジニア……」

触れたそのゴールドの毛には、白髪が混じっている。そして足腰もどこか弱くなっているような気がした。

お別れの時が近くなっている、そう感じた時泣きそうになった。でも、犬は人の気持ちを敏感に感じ取れる。僕が泣いたり悲しんだら伝わってしまう。だから、笑って過ごしたよ。ジニアが十二歳になって、もう立つこともできない寝たきりになってしまうまで。

「ジニア、ただいま」

学校から帰ると、僕は真っ先にジニアのところへ行く。前までは、尻尾を振って玄関まで出迎えてくれた。でも今は、僕が呼びかけても反応しないことが多い。

「ジニア、今日ね学校でね面白いことがあったんだよ!」

元気のないジニアを見ているのは辛い。でも、ジニアは生きて僕のそばにいてくれている。だから僕は今日もジニアに話しかけていたんだ。前みたいに尻尾を振ってくれなくてもいい。君の温もりが、「生きている」という証があればそれでいいんだ……。