かけっこをして、木の棒を引っ張りあって遊んで、最後は丘にある大きなブナの木に向かって競走する。僕はいつも全力で走るんだけど、ジニアの方が早くていつも負けちゃうんだ。

「ああ〜!今日も負けた〜!」

ゴロン、とその場に寝転ぶとジニアは顔を近付けてきてペロペロ僕の顔を舐める。僕は「くすぐったいよ〜!」と言いながら、ふさふさの尻尾を振るジニアを優しく撫でた。

「ジニア、大好きだよ。ずっと一緒にいようね」

犬は、人間よりも命は短い。そう両親から何度も言われていたから「ずっと一緒」なんて言葉は叶わない。そうわかっていても、ジニアとずっと生きていたくてブナの木の下に来るたびに「ずっと一緒」と言い続けた。

一年重ねるごとに僕は大きくなっていく。でもジニアはどんどん歳を取っていくんだ。

「よし!競走しよう!」

ブナの木の下に向かって走り出す。スタートは同時に切って、いつもジニアが僕を抜かしていった。でも、ある日を境にジニアは僕に勝てなくなっていったんだ。