「動物の売買……」

フィオナがそう呟くと、エヴァンの目が見開かれる。動物が大好きなエヴァンにとって、この事件はかなりショッキングなものだろう。

「ホオアカトキ、クロアシイタチ、ペンギンといった希少動物が捕獲され、または動物園などから盗まれ、闇市で売られているんだ。この売買をしている組織を突き止め、逮捕したいと思っている」

資料には、闇市に潜入したシオンとサルビアが撮ったと思われる写真が何枚も乗せられていた。狭くてほとんど身動きの取れない檻の中、薬物を打たれているのか、それともまともに餌や水を与えられていないのか、ぐったりとして衰弱した動物たちの姿が映されている。中には、牙や皮を奪われて殺されてしまった動物もいた。

「ひどい……」

レティシアが怒りを見せ、レイモンドも悲しげな顔をする。フリージアは表情は変えなかったものの、資料の持つ手に力が入っていた。そして、何も感じられないフィオナはエヴァンの方を見る。エヴァンは、ただ呆然と資料を見ていた。

この時、エヴァンは自身の過去を振り返っていたのだ。